2025/10/20

プレミアリーグがサラリーキャップを導入?

 先日プレミアリーグがサラリーキャップの導入を検討しているというニュースを目にした。

そのルールとして、ざっくり言うとリーグ最下位の売り上げの5倍までを上限として予算を制限するというものだ。

リーグ全体での戦力の開きを抑える目的で運用するつもりらしい。

はっきり言って私は大反対だ。百害あって一利無しだと思っている。

以下にその理由をいくつか挙げていこうと思う。



●欧州サッカーにサラリーキャップが合っていない

そもそも論だが、昇降格がある欧州サッカーにサラリーキャップという制度そのものが合ってない。

例えば日本のプロ野球やアメリカのメジャーリーグサッカーのように昇降格が存在しないスポーツであれば、

戦力を均衡するという大義名分には意味がある。

突き抜けて強かったり弱かったりするチームがいるとリーグ全体がマンネリ化していくのが目に見えているからだ。

またそれらの均衡を促すプロスポーツでは選手獲得をドラフト制度やウェーバー制度で制限している。

有望な若手はドラフト会議にかけられクジ引きで入団が決まったり、

ウェーバー制度は昨季の順位で獲得選手を優先的に指名出来る制度だ。

移籍にしてもFA権を得るまで数年間所属チームへの貢献が求められる。

つまり戦力が均衡になるようにするための制度がサラリーキャップ以外にも揃っているからこそ成り立っている。


だが欧州サッカーには毎年上位リーグと下位リーグ間で昇格・降格というルールが存在する。

弱ければ降格して新たに他のチームが昇格してくるため、リーグ全体でのマンネリ化は少ない。

また選手の入団や移籍についても移籍期間は存在するが、ドラフトやウェーバーのような縛りはなく、

契約期間中であっても違約金の支払いで合意があれば選手は希望したチームへ移籍することが出来る。

そういった意味では、欧州サッカーでは弱者と強者の格差を許容する前提でルールが組まれているのだ。

金持ちクラブはとことん金を費やし、貧乏クラブは安い選手を発掘して高く売る。

そういう循環があるからこそ選手のサイクルなども頻繁に行われる。

そして、たまにそういった弱者のクラブが大物食いするジャイアントキリングが起こるから

サッカーは面白いんじゃないのか。

こういった戦力の不公正さこそがそもそも欧州サッカーの魅力だと言っていい。


それに使える資金の制限としてはFFPなどクラブの収支によって左右されるルールがすでに存在している。

今更昇格してきたばかりのチームの予算に優勝を争うチームが規模を合わせなければいけないのか意味が分からない。

全てのチームが優勝を狙っているわけではない。チームの財政状況や戦力によっては残留を目標にしていたり、

カップ戦ではターンオーバーしたりとチームごとの生存戦略があるのだ。

戦力を均衡させて全てのチームにチャンスがあるというということは、

裏を返せば突き抜けたチームを作らせないという足枷にしかならない。

そういったことからサラリーキャップという制度そのものがサッカー界のルールに合っていないのだ。


●国際的な競争力を失う

大前提として現時点でプレミアリーグは他の主要リーグと比べてもかなりの群雄割拠で

上位と下位の戦力差が最も少ないリーグの1つでもある。

今夏プレミアでは上位クラブが中堅クラブからエースをごっそり掻っ攫っていく移籍が目立った。

その状況からも当初はビッグ6が上位を占めるのではと思われていたが蓋を開けてみれば、

5億£費やしたリヴァプールは開幕7連勝の後、4連敗と調子を崩していたり、

主力を抜かれたはずのボーンマス、ブレントフォード、クリスタルパレス、ブライトンなどは

主力を持って行った上位チームを破っていたりしている。

そういった感じで中堅クラブにもレベルが高い選手が揃っており楽に勝てるチームは1つもない。


ブンデスのバイエルンやリーグアンのパリ、リーガのマドリーやバルサと言ったように

リーグで突き抜けて強いと言えるクラブがいないのだ。

勿論、ビッグ6と呼ばれるクラブやCLに出場するクラブは他のリーグ強豪と比べても強いが、

4連覇したシティですら昨季は何試合も取りこぼしているし、ここ数年2位につけているアーセナルも

ウエストハムやアストンヴィラといった中堅クラブに足元を掬われ優勝争いから脱落していった。

昨季に至ってはユナイテッドやスパーズが降格圏ギリギリに低迷していたし、

今季は昇格したサンダーランドは早くもCL圏争いに食い込んできている。


何故そのような熾烈な競争が生まれるかと言えば、プレミアリーグの突き抜けた放映権料がベースとしてある。

そして1位から20位までしっかりと分配され、最下位のクラブですら他国の優勝クラブの分配金に匹敵する額を受け取れるのだ。

そういった巨額の予算で他国との選手獲得競争をリードし、良い選手が軒並みプレミアリーグを選択する流れになっている。

今や対抗できるリーグは王族が湯水のように金を使えるサウジリーグぐらいだろう。


こういった状況でもしサラリーキャップが導入されれば、恐らく選手の給与はかなり抑えられることになる。

そうなればサラリーキャップがない国やサウジのような資金力があるリーグに良い選手は次々に流出し、

プレミアリーグは選手の移籍選択肢の優先順位を下げる結果になるだろう。

良い選手が集まらなければCLなどの成績でも他国に遅れを取り、

CLの成績が下がればリーグランクも下がり、CL出場クラブ数も減っていくという悪循環に陥りかねない。

つまりサラリーキャップ導入は国際的な競争力を奪い、リーグの衰退を招きかねないのだ。



●他国でも上手く行ってる例を聞かない

そもそもサラリーキャップを導入している国が狙い通りに戦力の均衡化が出来たという話はあまり聞かない。

例えばラリーガでは、マドリーやバルサと下位クラブの差が縮まっているようにはまるで見えない。

それどころかバルサですらサラリーキャップで選手登録が出来ない状況が発生しており、

中堅以下のクラブは予算を維持するために選手を高値で海外に売却するため戦力は低下する一方だ。

(一応ラリーガでは放映権の分配がプレミアよりも歪で、極端にマドリーやバルサが優遇されているとも聞く)

その結果、戦力を維持できる上位だけが勝ち続けるという目的とは真逆の結果を招いている。

つまりサラリーキャップでは主目的であるはずの戦力均衡は図れず、いたずらにリーグの衰退を招くだけになるのだ。



上記で挙げたように、サラリーキャップには何のメリットもないのだ。

無論制度が有効なスポーツはあるが、欧州サッカー、ひいてはプレミアリーグには不釣り合いなルールと言える。

また将来的にリーグが衰退して困るのは、恐らくこの制度を推しているリーグ運営側だと思う。

リーグが衰退し、魅力がなくなればスポンサーは撤退、放映権料は下がっていくことになるだろう。

恐らくはバブルが弾けると言われるような現象が発生するだろう。そうなってしまっては後の祭りだ。

元の規模に戻すことは一朝一夕では不可能で、恐らく数年規模、もしくは永久に元には戻らない可能性が高い。

プレミアリーグは血迷った判断をしないで冷静に判断してほしいところだ。


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